The Battle Of New Guinea

Designers Note

by Hanzo

デザインの反省点と両陣営の評価を率直に記してみました。

今後のイベントに役立てば幸いです。

 わたしはWarbirdsの一番の魅力は、大人数でロールプレーイング的イベントを行えることだと思っている。そして、Jsイベントの質の高さは特筆すべきものがある。これまでJsイベントは5人のCMを中心として運営されてきた。なかでも最近のヒストリカルイベントはBat氏の手によって運営されている。しかし、昨年春に行われた単発イベントを最後にイベントの計画が無い状態が続いていた。イベントの規模は段々と巨大化し、昨今のイベントでは参加人数は100名弱、準備期間も含めると数ヶ月に及ぶようになっている。このようなイベントを企画し運営するのは非常に骨が折れるだろうというのは想像に難くない。これをボランティアであるCMに次々と打ってくれというのは酷であろう。わたしは、以前CMから「Hanzoにやってみたいアイディアがあれば協力する」と声をかけてもらっていたのもあって、「やってください」と頼むよりは自分でやればよいと考えた。企画をまとめてCMに打診したところ、sy-c氏より暖かい協力のお申し出があり、本イベントは実現したのである。


複雑すぎるルール

 度重なるリファインで得失点システムが不必要に複雑、もっといえば乱雑なままになっていた。これにより直感的に戦略を立てにくいいルールになってしまった。リファインの際には当初のねらいを再検討し第一にわかりやすいルール作りを心がけるべきだったろうと思う。


イベントスケジュール

 これだけJsイベントの規模が大きく複雑になった現在、1週間に1ラウンドというスケジュールは過密すぎ、陣営に過酷な負担をかけることになったと思う。個人的に本イベントのようなキャンペーン型ヒストリカルイベントは3ラウンド以下で、ラウンドは隔週が良いだろうと思う。ただ、一気に短期間でやったほうがイベントの盛り上がりと司令部にかける負担が少なく良いという見解もあるだろう。


バランス設定について

(i) 補給力

 両軍が損失を可能な限り抑えようとすること(考えてみれば非常に自然なこと)を見抜けず、デザインの根本がゲームに反映されないという大失敗であった。量的、質的消耗はすべて質低下で置き換えるというデザインのはずが、質低下はイベント中まったく発生しなかった。第4戦でかろうじて両軍が第4戦前の補給を上回る損害を与えていたが、いま告白すると、想定していた両軍の攻撃力はこの第4戦さえ上回るものだった。補給力を小さく設定して全日程消化を待たずにイベント終了という事態に配慮しすぎた。この見積もりの甘さは率直に認めたい。

(ii) 損失ポイントと爆撃ポイントのバランス

 爆撃ポイントの比重が高いと損失を省みない片道攻撃を誘発し、逆に損失の比重が高いと爆撃作戦そのものが成立しなくなる。今回の設定には両陣営から損失の比重が高いのではないかという意見を頂いた。損害予想を基礎に作戦計画をおこなうとどうしてもそういう印象をもたれることは理解できる。その意味で本戦第2戦と第4戦の結果は非常に興味深い。

(iii) 最終的なバランス設定の根拠

爆撃および損失を主観的な基準(小、中、大、甚大)を設定した

被害    甚大
爆撃 Sx1 Sx2 Mx1+Sx1  Mx1+Sx2
損失 12.5%  25%  45% 60%

(注)爆撃 : SSmall M=Mainのボーナス  損失 : 戦闘機2:爆撃機1での総出撃数に対する損耗率

 この基準を用いて、爆撃と損失をともに「中」に抑えた場合は補給力でカバーできるというように補給力を設定した。これは過去のイベントの損耗率を参考にしたが、史実のように25%の損害は再編成を要する大損害だったことを考えると、確かに影響を低く設定しすぎたと言える。そしてイベントでは効果大または甚大となるような爆撃作戦は計画されなかったので補給度の低下は発生しなかった。


Version 2.75

 本戦第1戦と第2戦の間に2.75の正式版発表があった。この影響は無視できないほど大きかった。本戦前に日本軍の増員をG4M2の脆弱さを理由に断行したというのに、2.75の導入はさらに日本軍に有利に働いた。不利益を受けた米豪軍の諸氏が冷静に対応したことに感謝したい。


米豪軍のラバウル空襲は可能か?

 感想戦BBSにおいて初めてB25Cの航続力ではラバウル攻撃は不可能という見解が示されている。しかしB25Cの水平爆撃は可能なようにデザインしている。MB-RAの単純往復、途中を経済速度でとび(高度15KftRAから半径20マイルをスロットル100%で飛んでも燃料は5%以上余裕がある。たしかに非常に困難ではあるがまったく不可能ではない。わたしは米豪軍の爆撃隊に難度の高すぎる爆撃作戦を期待していたのかもしれない。受け入れられなかったとはいえ、私自身はあの設定に間違いは無かったと思っている。


予備ライフルール

 できるだけたくさんの人にイベントを楽しんでもらいたいという狙いと、1ライフ制を採用してシリアスなイベントを目指すこと、この矛盾を埋めるためのルールだった。ルールの趣旨を突き詰めれば突き詰めるほど矛盾がはっきりしてくるので、趣旨を曖昧なままにして「事故の救済」という1点に参加者の理解をもとめるという手法だった。


紳士協定

 今回、紳士協定によって爆撃機の高度制限を設けた。結果を見るとほとんど問題らしい問題は起きなかったといっていい。これはJsイベントの質の高さ、参加者の意識の高さを物語るものだと思う。

 紳士協定を採用するにあたっては意図せざる違反をどうするかという問題に非常に神経を使った。この問題をクリアにすると、おのずとグレーゾーンが狭まるからである。(意図的な違反は論外である) 両陣営には高度制限を遵守するための自主的措置を考えていただき、こちらからは、できるだけ制限高度ぎりぎりを飛ばないこと、制限高度付近で外部視点やオートクライム(爆撃照準時)を使わないことを提案した。このように明文化されていないルールの補足をイベントマスターから申し入れて、陣営に紳士協定の尊重へ配慮してもらった。この申し入れは、「厳密にいえば違反になるケースでも不問に付す」という罰則部分の弾力的運用と抱き合わせであった。

 これは確かにスマートではないと思う。理想はシンプルかつ違反が発生しにくいルール(言い換えれば違反か否かを客観的かつ明快に判断できるルール)である。しかし、現実は設定で制御できるルールであろうと紳士協定であろうと参加者の遵法意識に依存している根本の部分は何ら変わりが無い。よって、紳士協定が一般的になり厳密な罰則の適用に参加者の理解が得られるようになれば、ルール設定に大きな幅が出ると思う。

 本イベントで行ったものは、紳士協定が一般的になるまでの過渡的措置と考えてもらいたい。


両陣営の辛口評価

日本軍司令部

会議ログはほぼ非公開、会戦後の戦訓調査も皆無でどこでどう作戦が練られているのか進行状況が不透明であった。爆撃作戦の成功が零戦隊の制空に依存していたので作戦立案は事実上、戦闘機隊主導で行われていた。曖昧なままの指揮系統や役割分担に躊躇しながらも積極的なスタッフは自分たちの出来ることを模索していた。イベント後半になって危機感を持ったボランティアが積極的に発言し、イベント中決定的意味を持つ小作戦が提案され実行された。

日本軍戦闘機隊

結果としては根強い格闘戦主義、撃墜主義といったMA的運用を排除し、徹底的な制空戦を行うという意識が徐々に形成された。MA部隊単位の編成による影響か戦闘機隊全体でイベントに臨むという雰囲気は最後まで感じられなかった。積極的な部隊は部隊単位で自主的に訓練会を行っていた。

日本軍爆撃機部隊

積極的な訓練を行なっており、部隊内の結束は本イベント中最高だった。司令官を中心に非常によくまとまっていたと思う。脆弱な一式陸攻で迎撃機のまつ敵地へ毎回勇敢に突入した姿には拍手を送りたい。

 

米豪軍司令部

司令官決定が遅れたが、いったん動き始めるとスタッフがテスト結果や具体的かつ詳細な提案を次々と出していった。また、これを裁く司令代行の真摯な態度が印象的でスタッフに良い刺激となっているように見えた。惜しむらくは、B25Cの大規模な運用を放棄したことである。司令部は、大規模な水平爆撃作戦を実施するためには、長い準備が必要であることを認識していた。焦りのある中、期待された爆撃のエキスパートからのアドバイスが皆無で時間は徒に過ぎて行った。そしてついに水平爆撃を決定的な要素と確信することが出来ず戦闘爆撃機に比重を移すことになる。これはラバウル攻撃を放棄することを意味し、米豪軍の敗因となったと思う。

米豪軍戦闘機隊

対戦闘機、迎撃任務の戦闘機部隊は作戦、戦術的にはMAの応用で済むレベルだったとはいえ、隊長のリーダーシップの下、非常に意欲的だったと思う。ガンサイト、識別訓練用HPなどを作成し独創的な試みがなされていた。

米豪軍戦闘爆撃機隊

結果を当てに出来る急降下爆撃作戦を可能としたレベルは真に評価に値すると思う。アサインメントひとつとっても各隊員のスキルをよく把握しスキルのばらつきを小さくしなければならない。隊長をはじめ意欲的なメンバーが日夜の訓練に励み、作戦目標をすべて達成した業績は高く評価される。

米豪軍爆撃機隊

残念ながらB25Cの相対的能力が275の導入前後で大きく振幅したため継続的な立案作業に邪魔が入り積極的な運用案が最後まで表に出なかった。テストプレーまでは2,3の独創的な戦術が提案されていた。しかし残念ながらそれらが実施レベルまで練磨されなかった。


最後に

本イベントに参加された皆さん、ありがとうございました。

楽しんでもらえたでしょうか?

熱心な作戦会議が毎晩のように行われ、公式練習会以外にも自主練習をしている姿を見て、マスター冥利に尽きると感謝するとともに、責任の大きさを痛感しました。

イベントは、ルールとバランスの公平さを信頼してもらうことで成立していると思います。今回、わたしは、時期を省みずにルールの修正を断行したり、陣営内におせっかいといえるくらいの顔を出し、口も出させていただきました。これはルール/バランスの公平性を保ちたいという思いがそうさせていたのですが、まさに自分の未熟さから出た無様な姿だったと思います。

これに懲りずまた違ったコンセプトでイベントの企画をやってみたいと思っています。

そのときは是非お付き合いください

それでは~またどこかの空で!

Chikara (Hanzo) Yoshida  324thBS X.O